某月某日
日本では冬ですけど、これから南の島目指して旅立ちます。行き先は仏領ポリネシア、タヒチです。今年はずっと外国に行けなかったし、ほんとに楽しみです。
というわけで、クルマを飛ばして成田に向かってます。
エア・タヒチ・ヌイのファーストクラスは、ポエラヴァ・ファーストといって6席だけです。フルリクライニングにして寝ることができるのはもちろん、お食事とかホスピタリティも最高でした。
某月某日
タヒチ島のパペーテから再び飛行機で、世界のダイバーの憧れの的、ランギロア島にやってきました。この海の青さ! 噂には聞いていましたが衝撃的です。
ランギロア島でも素晴らしい景観で有名なホテル・キア・オラへのチェックインは、来週イースター島に行く予定もあるので今回は見送り、ボートで近くの島にあるリゾート、キア・オラ・ソバージュに渡ります。
想像を絶する風景がそこにありました。どこまでも続く蒼い空と海、白い砂浜は果てしなく広がり、椰子の木がそよ風に揺られ枝葉をすりあわせてざわめきあう…。この世の楽園以外の、何物でもありません。
某月某日
これが僕の宿泊したキア・オラ・ソバージュのバンガローです。島内には、このようなバンガローがほんの数棟しかありません。ここでなにもせずに、ぼーっと過ごす。そんな贅沢を味わうことこそが、ここでのバカンスのスタイルです。管理人のマイケルさんも「すべて忘れろ!」と連呼してくれました。
ところが、リラックスしすぎて逆に調子が出てしまい、頭がしきりに回転し始めました。電気の通っていないこのバンガローでは、夜はランプの明かりで生活するのですが、それでも大学ノート三冊ぶんのアイディア帳がびっしり埋まってしまいました。
千里眼シリーズは映画的とよく言われますが、小説は視覚効果に頼る映画とは違い、読者のイマジネーションを表現ツールのひとつとして利用するものです。だから、このように絵になる舞台は、映画だと映えるけれども、小説だと読者の想像力に多くをゆだねることになってしまい、リーダビリティが低下するかも、などと思ったりもします。
某月某日
キア・オラ・ソバージュでの楽しい日々を過ごした後、予定を変更してホテル・キア・オラの水上バンガローに泊まっています。どうしても執筆しておきたい章が思い浮かんだので、パソコンが使える環境に留まることにしたんです。ただし、ここでの仕事は夜だけです。日中はダイビングせずにはいられませんよ。
某月某日
日本から出来上がったばかりの「蒼い瞳とニュアージュII 千里眼の記憶」が送られてきました。
完全版にする際に短くした前作のページ数に合わせて、この作品も短めに仕上げました。
一ノ瀬恵梨香はこの作品で千里眼・岬美由紀と過去に因縁があったことが明かされるんですが、解説の香山二三郎さんは判りやすくするためにスピンオフと説明して下さいました。より細かくいうと、僕の場合は「スピンオン」とでも言うべき手法ですね。枝葉分かれしていくのではなく、別々のシリーズが統合されていくんです。
某月某日
小学館版と角川版で設定が違うのをどう解釈すればいいの? と聞かれることがありますが、小学館版は旧オリジナルシリーズ、角川版が現行リニューアルシリーズということです。もともと、小学館版は作品ごとに故意に設定を変えたり、リセットしたりしていました。
角川版では「催眠」「千里眼」「マジシャン」の全シリーズ作がちゃんとつながるようになっているんです。「催眠 完全版」のあとに、「千里眼 ミドリの猿 完全版」に繋がっても、決して「催眠」のアカデミックな世界観を壊さないようになっているんですよ。
「運命の暗示 完全版」の改稿は全編に及んでいて、岬美由紀は中国全土を駆け巡るし、旧作にあったようなご都合主義(村人に追われているはずなのに、別の村ではあっさり仲良くなってお金を貰ったりする)は排除していますから、とにかくハラハラすると思いますよ。お楽しみに。
それに「催眠 完全版」と「マジシャン 完全版」は、旧作をお読みになっている方にこそ、あっと驚く仕掛けを用意しております。どちらも旧作とは異なる結末ですので、映像作品のリメイク版を観るような感覚でお楽しみくださいね。