Novel Of Keisuke Matsuoka

ヘーメラーの千里眼(上)
小学館 ; ISBN:4094037950 ; (2005/03)650円(税込)
 航空自衛隊のエースパイロット伊吹直哉が引き起こした未曾有の過失事故、それによって国家の威信に重大な波紋が生じる。麻薬密輸船の攻防に頭を悩ます防衛庁上層部は、何故か伊吹の精神鑑定を要求する巨大企業資本に翻弄され、史上空前の陰謀に巻き込まれていくのだった……。
 女性自衛官初の戦闘機パイロット、岬美由紀28歳。その愛と青春、挫折、そして生涯をかけて挑む<謎>と<戦争>。サイコスリラーの妙味を加えた新感覚冒険ミステリ最新作。

 終戦60周年の刊行となる本作は、自衛隊員としての美由紀の過去の回想を中心に物語が展開する。上巻では、美由紀が防衛大でいかにして首席となりえたかが描かれている。もちろん、同時進行で「死角」のその後、現在の事件も語られる。
 この上巻におけるハードカバー版との大きな違いは、美由紀の初恋の彼のキャラクターが変わった点にある。上坂孝行が本質的な小悪党として描かれているため、防衛大に入学する過程も、またその後の経緯も大きく異なっている。この変更によって、18歳の美由紀の性格が現在とつながりを持つだけでなく、「千里眼」第1作に描かれた過去の話とも矛盾なく結びつくようになった。